2chとひろゆきの功績を考えてみた(後編)「クリエイター支援」

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前編はこちらです。
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supon777.hatenablog.com

 

2chひろゆきの功績を考えてみた(後編)
「クリエイター支援」

 

Adoさんは「うっせぇわ」で一気に国民的なアーティストになりました。

Adoさんが有名になるまでの過程を超ザックリ要約すると、

 

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ニコニコ動画にボカロ曲の「歌ってみた」を投稿する。

徐々に有名になる。

ユニバーサルミュージックと契約。

ボカロPのsyudouさんから「うっせぇわ」の提供を受け、国民的大ヒット。
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今となっては「ごく当たり前の流れ」です。こう言っては失礼ですが「よくある有名になる過程」ですよね。

 

しかし一昔前まではたくさんのハードルがあったのです。

 

・赤の他人が作った曲を歌って怒られないか?
・権利処理はどうするのか?
初音ミクを使って有名になったら「金儲けに走った」と叩かれないか?
・世間は2chやニコ動を「便所の落書き・違法サイト」と見ている。そこから世に出て世間一般は認めてくれるか?(主にレコード会社などメディア側の不安)

 

これらのハードルを一つ一つクリアしていった結果、今があるのです。
その際の2chの役割」ひろゆきの功績」は非常に大きなものでした。

 

「赤の他人が作った曲を歌う」行為は、今では当たり前すぎてごく普通のカルチャーとなっています。

しかし2000年代以前までは、とてもハードルの高い行為、でした。
自作曲をホームページに出している作曲家はいましたが、歌い手が「この曲を歌いたい」と思っても、気楽に歌うのはムリだったのです。

 

作曲家とメールで何十回とやり取りを重ね、ようやく歌う許可を得ても、納得のいくものができず揉めてしまったり・・・。とにかく大変だったんです。

 

「他人が作った曲を歌う行為」を一気にメジャー化したのが2ちゃんねるでした。

 

元祖はちんこ音頭です。
2002年に、2chお祭り板で制作された曲でした。

 

ちんこ音頭が変えたネットの常識。

ちんこ音頭」は2ch内で作られ、動画や替え歌が多数生まれました。CGM音楽の元祖」とも言われています。
プロの音楽家として活躍するmanzoこと坂下正俊さんも、この曲を歌っていました。

 

ちんこ音頭は、ネットに大きな変革をもたらしました。

 

「歌ってみてもいいですか?【事前確認】」
から
「歌ってみた【事後報告】」

 

の大きな変化です。
2ch以前の歌い手は作曲家に「この曲を歌ってもいいですか?ネットに上げてもいいですか?」という「事前確認」を取るのが基本でした。
無許可にネットに上げたらトラブルになりかねません。

 

それが「ちんこ音頭」では「お前の作った曲を勝手に歌ってみたわw」という「事後報告」に変化したのです。
作曲者側も「どんどん勝手に歌ってくれww事前確認とか不要w」というスタンスです。

 

この「事後報告の文化」が、クリエティブ作業参加のハードルをグッと下げました。
下手だろうが何だろうが勝手に歌う。
勝手に編曲する、勝手に動画を作る。
いちいち事前許可を取らないので、ものすごいスピード感でコラボ作品が生まれます。

 

事後報告カルチャーは「ネットデビュー」のハードルもグンと下げました。作曲者と密にコンタクトを取る必要が無いので、「とりあえず勝手に歌ってネットに出してみる」が可能になったのです。

 

DTM板、カラオケ板、VIP板などを中心に「歌ってみた」は流行し、ニコニコ動画へと引き継がれました。

ニコ動初期は2ch出身のボカロPや歌い手が活躍。
2chで培われた「事後報告の文化」はニコ動でも健在でした。
勝手に歌ってみた、
勝手に踊ってみた、
勝手に作ってみた。
下手だろうがダサかろうが何でもいいんです。とにかく自由に参加する。
赤の他人の曲を勝手に歌っても、怒られません。むしろ勝手に歌うことが推奨されます。事前許可は不要。気楽にどんどんやりましょうよ、と。

 

「事後報告の文化」が許されたのはニコニコ初期まででしょう。現在はケースバイケースで、事前許可を取った方が良いケースも増えてます。マナーや権利を守りながら、慎重に行動する必要もあります。
それでも「気楽に歌ってみてOK」な雰囲気は十分に残ってます。経験や実績を問わず、毎日のように「歌ってみた」は投稿されています。

 

2chが作り上げた「自由気ままにネットデビューできる事後報告カルチャー」は今でも残り、Adoさんなど国民的スターが発掘されるきっかけにもなっています。

 

さてこの「事後報告カルチャー」ですが、2ch内で仲間内でやっている間はうまく機能してました。しかし「収益化」を考えると「権利問題」は当然出てきます。

 

権利問題の最初のトピックは「VIP STAR」でしょう。
ちんこ音頭」は2chオリジナルでしたが、「VIP STAR」は平井堅さんの楽曲「POP STAR」の替え歌でした。

 

VIP STAR」とひろゆきの努力

2005年、2chで大ブームが起きた「VIP STAR
これは平井堅さんの楽曲「POP STAR」の替え歌です。当然、権利問題が発生します。
そこでひろゆきは、権利問題をクリアしたうえで商業化をしようと試みました。
しかしエンタメ業界にツテがありません。

 

そこでひろゆきは、レコード会社や芸能事務所になどに電話して回りました。
一軒、一軒、名乗りながら電話をしたのです。
信じられますか?あのひろゆきが、一軒一軒、営業電話をかけたのです。

 

「もしもし?2chというサイトを管理している西村博之と申しますが、VIP STARという曲がありまして・・・」

 

ひろゆきは一貫して「優れた才能を2chやニコ動だけに閉じ込めてはいけない。世に出さなければいけない」と考えていました。そのための行動もしていました。

電話はその一環です。


他にもイベント時にエンタメ業界へのコネ作りを要求するなど、なりふり構わない行動を続けます。

 

残念ながら「VIP STAR」の商業化はダメでした。
しかし、ひろゆきのエンタメ業界への地道な営業活動は実を結びます。

 

レコード業界の重鎮、丸山茂雄さんと事業を起こしたり、JASRACの大物、菅原瑞夫さんと関係を深めたり。

世間の評価は「2ch便所の落書き」で、ニコ動は「違法サイト」です。参入に躊躇する大手エンタメ業界人が多数派でした。
悪評を払拭するために、ひろゆきは地道に活動したのです。

 

今やニコ動から大手レコード会社でデビューするのは、ごく当たり前の事となっています。
その裏には、ひろゆきの地道な営業活動があったのでした。

 

ニコ動初期の職人(クリエイター)の熱量は凄まじく、ボカロのヒット曲も多数生まれました。職人同士の「連帯感」も強く、「俺たちのニコ動」という郷土愛もありました。

 

その連帯感と郷土愛の奧に、ひろゆきの存在は確かにありました。
2ch黎明期から職人に寄り添い、才能を世に出すために尽力し続けた。
私たちはひろゆきに包まれていたのです。
2chの時からずっと・・・ひろゆきの不思議なふいんきに抱かれていたのです。

 

もちろん否定したい人はたくさんいるでしょう。アンチひろゆきは多いでしょう。でも後付けで振り返れば、「なんやかんやでひろゆきの元に集まってたじゃん」てなります。

 

さて、ひろゆきは「職人に収益配分を確実にしたい」とも常々考えていました。この考えが論争を巻き起こします。

 

初音ミク「みくみくにしてあげる」のJASRAC登録を巡る論争です。

 

初音ミクを作ったクリプトン社長の伊藤博之さんと、ひろゆきとで、意見が真っ向から対立するのです。

 

ひろゆきらしく、大変失礼な方法で伊藤さんに絡んでいきます。

 

JASRAC初音ミクひろゆき

ひろゆき2ch時代から「職人に収益配分を確実にしたい」と考えていました。初音ミクブームが起きたときもそれは同じです。
「細かいことはいいからまずはJASRACに登録だ。とにかく収益を配分するんだ」が本音だったと思われます。

 

対してクリプトン社長の伊藤さんは「収益配分は大事だが、まずはみんなで話し合って問題点をクリアしていこう」という立場です。
初音ミクの商標や職人への事前説明とか、一つ一つをやっていこう、と。

 

伊藤さんは自社(クリプトン社)の公式ブログに、丁寧に主張を書いていきます。冷静な大人の対応です。
対してひろゆきは「伊藤さんのブログのコメント欄に荒しのように連投する」行動に出ます。

 

ひろゆき
・いったん白紙に戻そう。
・ぐたぐただから白紙にしよう。

 

と中立を装った連投をします。
しかし実際は中立ではなく、「伊藤さんの主張を否定する」ことに重きを置いていた感じでした。
一つ一つを丁寧に進めたいという伊藤さんの主張を否定し、まずはJASRACに登録だ、が本音だったのではないでしょうか。

 

伊藤さんはそれを感じ取り「ニワンゴ役員という立場でありながら中立を装って意見を述べるのは許容できない」と、ひろゆきに反感を持ったのでした。
自社のブログを荒らされたのですから、なおさら反感を持ったことでしょう。

 

この件は「権利や商標を確認しつつ今後も話し合っていきましょう」と一応の決着にはなりました。

 

07年当時、ボカロ界隈の嫌儲はすさまじいものでした。
「ミクで商売とか許さない!」
JASRAC登録は断固反対!」
そんな意見が大半だったのです。

 

しかしひろゆきは、強引ながらもJASRACとニコ動を繋げようとしました。
(伊藤さんのブログを荒らす行為も、強引さの表れだったのかもしれません)

 

みくみく騒動の時のひろゆきは、先走って失礼な行動だったかもしれません。
しかしその後のひろゆきは、JASRACの菅原瑞夫さんとコラボ動画を作るなどし、権利団体の普及に努めました。「アンチJASRAC」の声も徐々に弱まり、職人さんが収入を得やすい環境になっていきました。

 

現在、ニコ動発のアーティストが「お金を稼ぐこと」は当たり前になっています。Adoさんを「ボカロを利用して金儲けなんて許さない!」という人間は極々少数でしょう。才能のある人間が対価を得るのは当たり前となっています。
その流れを作った一端に、ひろゆきの尽力があるのは確かです。

 

以上、とりあえず書きたいことを書きました。全部私の主観で書いた歴史です。「くるちゃん史観」です。反論したい方、意見がある方、いろいろあると思います。ぜひそれを各自のTwitterなどで書いて頂ければと思います。2chひろゆきの歴史話が盛り上がればうれしいです。

 

(なお私は誰かと議論するつもりはありません。自分が書きたい視点で、自分の主観で書くだけです。あきらかな誤認があれば訂正しますが、議論を行うつもりはありません。すみません)

 

ネットカルチャーの隆盛は、2chひろゆきの功績だけではありません。多くの方々の努力があり、今があります。それでも、歴史の一端に、2chひろゆきの尽力があるのは確かです。

 

功罪両方ある2chひろゆきの「罪」は、今までも語れてきたし、今後も語られ続けるでしょう。
「功」の部分に光を当ててもいいのではないかと思い、書きました。

もっと書きたいことが出てくると思います。新規で書きたいです。

 

#2chに向き合おう
をよろしくお願いします!

 

なお、現在(2021年11月)のひろゆきの評価は避けさせて頂きます。
4chとひろゆきに関しては不明点が多いのでノーコメント。
インフルエンサーとしてのビジネスもよく分からないのでノーコメントです。
5chに関してもノーコメントです。

 

このシリーズは↓↓↓にまとめていきます。

*過去にTwitterやnoteに投稿したものを自主転載しています。